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2015年度のテーマ 〔基本功から基礎刀術への融合・発展〕


2015年度のテーマとしては、
〔基本功から基礎刀術への融合・発展〕
を挙げたいと思う。

昨年末、〔体系を学ぶ、全体を学ぶ。そして体系は進化する。〕の記事で記したように、会の発足からの10年間は、師父や老師方に学んだ体系をそのままの形で指導してきた。しかし現在の私が会員の皆さんに指導している内容とまったく同じ練習をしているかといえば、やはり異なってきている。また私が学んだ老師方の練習体系がどういう理由で構成されてきたのかも徐々に分かってきた。

一言で言えば、私が学んだ老師方の流派や門派には、各々その門派の根幹となる原理と練習法があり、それを基に先達達や各老師方が研究発展させ、現在指導している体系というものが出来上がってきたのだろう。私が現在も指導を受けている老師方の流派や門派には、やはり各々の特徴がある。

各々の門派で秀でている部分もあれば、やはり短所もある。先生の嗜好もあるだろうし、やはり特徴となる部分をクローズアップしていけば必然的にそうなっていくのだろう。そして、その老師方の指導を受けてきた私自身の練習体系も、ここ数年で随分と変わってきたし、考え方も変わってきたように思う。

その理由の一つは、ここ数年武器術を学ぶ機会に多く恵まれたという事があるだろう。本当にここ数年は、各老師方から様々な武器術を指導して頂いた。(詳しくは、代表者略歴を見て頂きたい。)その上で感じた事は〔太極拳や八卦掌の徒手技法のほぼ全ては武器術から発展してきた〕と思うに至った事である。

中国武術の世界では、よく武器術は素手(徒手術)の延長と言われる。もちろん反論する気はないが、私自身の感覚としては、武器術の技法を徒手に応用したとの感覚(認識)のほうが強い。

少し時代背景も含めて説明してみよう。

人類の歴史は、闘争と平和の時代を絶えず繰り返してきた。その時代を統治している政権が悪政を重ねていけば、不満分子が生まれ、その不満が民衆をも巻き込めば内乱となる。またこちらに原因がなくとも、隣国が領土拡大を求めて攻め込んでくれば、望まずとも戦争となる。

内乱や戦争となれば、当然兵士達は武器を持って戦うし、また民衆も護身のために武器を持つだろう。やむを得ない状況を除いては、武器を持った相手に素手で向かって行く者はいないだろう。当然、内乱や戦争の時代であれば、武器術が発達していく。

しかし、その内乱や戦争が治まり、新たな政権や国ができれば、治安維持のため民衆の武器は取り上げられてしまう。(日本でも秀吉の刀狩や明治政府の治安維持法、そして現在の銃刀法がある)

武器が持てないので、当然徒手術や拳法が発展する。つまり平和な時代であれば、徒手術や拳法が発展すると言う訳だ。

闘争(武器)→平和(徒手)→闘争(武器)→平和(徒手)といった時代を繰り返しながら、人類は武器術を発達させ、また徒手術も発達させてきた。そして、それらが繋がって伝わってきたのが伝統の武術である。

現代に伝わる伝統武術の類は、おおよそ清末期の武術だと思う。

清の安定した時代が終わり、欧米列強に徐々に侵食され、日清戦争が始まる時代である。

つまり、平和な時代が終わり、徒手術だけでなく、武器術が再び必要とされてきた時代である。

現在、我々に伝わっている武術の套路(型)は、そういった時代背景があっての套路という事になる。

となれば、套路自体に当然武器術の影響が多分に含まれている筈である。

しかし、現在の我々は普段から武器に触れる機会など皆無だろう。その我々が伝統套路を学んでみても意味が分からないのは当然である。現代武道である空手やボクシング、柔道などの素手の格闘技を参考にしてみても、いまいち合致しないのも頷ける。

実際には、日清戦争以後の歴史もあるが、その後中国は更に動乱の時代を迎える。辛亥革命が起こり、各地で軍閥が発起し、再び日本の侵略を受け、その後更に共産党と国民党の内乱となる。

銃器が発達してからの戦争は、大砲や空襲も用いられ、それまでの戦い方を大きく変革してしまった。武器術といっても、もはや槍だ刀だの時代ではなかっただろう。いつ命を落とすか分からない時代に武術を学んだり研究したりする時間は無かったかもしれない。

現在の中国が建設された後も、文革があり、何十年と時代が空いて、ぱっと伝統の武術の型を与えられても、意味が分からないのは中国の人達も同じだったかもしれない。

前置きが少し長くなったが、本年度のテーマとしては、こういった時代背景があり伝わってきた套路を解読する手段として、まずは当会に伝わっている基本功を刀術の基本を通して見直してみましょうと言う事である。

以下、具体例を述べる。


1)青龍探爪から単挿掌、そして扎刀へ

青龍探爪
当会のもっとも重要な基本功の一つである青龍探爪。いわゆる大地と呼応する力を前方に導く動作である。太極拳一般では双按と呼ばれる技法。

単挿掌
青龍探爪で養成した力を順勢の一方の手に通す単挿掌。半身になる際、体は一切捻らず、肩を落とし、純粋に大地からの呼応力のみを通す。

扎刀
基礎刀術の進歩扎刀。単挿掌の勁道に武器を持たせれば必然的に扎刀となる。

と理屈は簡単であるが、武器を持ってしまうと、武器を操作する事自体に意識がいってしまい(満足してしまい)、大地との呼応力を用いる事を忘れてしまうので、当会では素手→刀の間に短棒を用いて、徒手と武器術の感覚を統一し、あくまで呼応力で稽古する点を重視している。

2)大鵬展翅から平斬、そして単鞭へ

大鵬展翅2
同じく当会の基本功の一つである大鵬展翅。

大鵬展翅1
大鵬展翅は2種類あるが、ここでは開合動作を主とした大鵬展翅を例に挙げる。

平斬
大鵬展翅の開の動作に重心の移動と胸の開合を加える事により、基礎刀術の平斬となる。

単鞭
平斬の動作を徒手で行えば、単鞭などの動作の根幹的な身法となる。

3)掄劈刀から乱扎衣へ

劈刀1
基礎刀術の一つである掄劈刀。

劈刀2
文字通り、刀を円を描いて振り上げ、切り落とす動作である。

扎刀
掄劈刀の身法に前述した単挿掌や扎刀の(大地との呼応力を前方に導く)意念と勁を融合させる事で、

乱扎衣
陳式太極拳の基本技法である乱扎衣(老架系)となる。

4)撩刀から金剛搗碓へ

撩刀1
下から上に切り上げる動作である撩刀。

撩刀2
ここでは、進歩撩刀を例に挙げる。

金剛搗碓1
この撩刀の動作は、金剛搗碓(老架系)の過渡動作とほぼ同様である。

金剛搗碓2
金剛搗碓の場合は、45度方向に上歩する。

金剛搗碓3
金剛搗碓に含まれる撩陰掌。刀法では進歩し、胸を開く。

いくつか例を挙げてみましたが、いかがだったでしょうか? 実際には、1)と2)が基本功と基礎刀術の融合、3)と4)は、基礎刀術から太極拳の基本技法への発展となります。私個人の見解では、陳式太極拳(特に老架系)は非常に刀術との関連が強いように思う。一方楊式太極拳は、棍術や槍術の影響が強いように思われる。(棍術は来年以降に指導予定である)

伝統武術の套路というものは、普段武器の練習をしていなくても、いざとなればいつでも武器を使いこなせるような工夫と身法が、秘かに套路の中に組み込まれているように思う。

本年度の目標としては、入門2年以上の方は、基本功と基礎刀術の融合を。そして3年以上の方は、基礎刀術から太極拳の基本技法までの習得を目指して頂きたい。いずれにしても約10種類の基礎刀術を、まずはしっかり覚えていきましょう!


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