体系を学ぶ、全体を学ぶ。そして体系は進化する。
- 2015/01/07
- 14:19
〈体系を学ぶ。全体を学ぶ。〉
2014年度の会の活動に関しては、【2014年を振り返って】で記したので、今回は私個人の昨年の気付きについて記してみようと思う。
不思議と、ここ数年は武器術を学ぶ機会が多く、鄭先生からは、子母鴛鴦鉞や太極剣、太極刀を学ぶ機会があり、李老師からも八卦大刀を学ぶ機会を得た。また現在、陳式太極拳の師父からは梨花槍を学んでいる。
実際に徒手技法だけでなく、武器術を学んできて得た感想としては、武術というものは、体系(全体)を学ばなければ意味が無いという事だ。
その門派の全体の体系を学ぶ事で、基本と套路(技法)の関連性が分かり、武器術を学ぶ事で徒手術(拳法)と武器術の関連も分かってくる。太極拳や八卦掌等の内家拳系の徒手技法のほぼ全ては、剣や刀、槍法などの武器術を発端としている。つまり剣や刀、槍を扱う動作で徒手技法も行っているという事だ。
実際に太極拳や八卦掌を学んでいると、套路上に意味の分からない動作や立ち方があると思う。それらは武器を持った際の動作や技法であることが多い。また対練を学ぶ事で一人稽古の意味も分かり、戦術や戦略は武器術のものが、そのまま徒手術にも活用されている事が理解できてくる。
つまり全体で一つという事だ。体系の一部分だけを知っていても何の役にも立たないし、また単純に他流の部分を寄せ集めても意味はない。
その門派の全体を学ぶ事で、その門派の絶対的な原理や法則を頭と身体、そして感覚で理解することで功夫が高まっていく。それが武術であり、伝統門派だと思う。
言い換えれば、体系を学ぶという事は、その先生が学んできた技術と練習体系を同じ過程を経ながら学んでいく事で、先生の動きを構成している要素を学んでいく事と言えるだろう。
先生が学んできた全ての技術を学ぶ事は難しいかもしれないが、それでも出来るだけ全体の体系(技術)を学ぶ事で少しづつ師の動きの要素は見えてくるだろう。そのためには、まずは先生の動きを真剣に真似る事。そして、その門派に伝わっているものは、選り好みせずにしっかり学んでおく事だ。選り好みをしていては、先生の動きを構成している要素が揃わない訳だから、当然先生の動きに近づく事はできないだろう。

【36式太極刀】武術は体系を学ぶ事が何より重要である。
〈体系は進化する。〉
さてここで問題がある。それは、体系を学んでいく過程で練習メニューが次第に増えていき、段々と膨大な量になっていく事だ。ここで、多くの方は基本や初級で学んだ内容を捨てて、先の内容に進む。それはそれで結構だが、基礎的なものを練習して積み重ねていかなければ功夫は身に付いてくれない。(増えていく練習メニューをどう消化していくかは、練習の秘訣の中級編をご覧頂きたい。)
先生のほうでも、その膨大な量の練習メニューの全てを日常的に練習するのは無理だろう。必然的に、先生のほうでも学んだものを整理して必要なものは残し、内容が重複していたり不必要な部分は省いていく。そして、それがその門派の体系となっていく。つまり体系というものは、普遍的なもの(要素)を残しながら、同時に変化していく。つまり進化していくという事だ。
理由は、先生自体も成長していくからである。先生自体が上達し、理解が深まるにつれて、何をどれ位の頻度で練習していくかの割合が変わっていくし、そこに先生自身の経験や工夫が加わる。
同じ先生に習っていても、習った時代で教えている内容や練習体系が変わってくるのは、そのためである。先生自体の動きや技も変わり、考え方も変わっていくため、体系自体も変わっていくという事だ。
その門派の体系を構成している要素としては、以下の2点が挙げられる。
① その先生が学んだ根幹的な体系
② その先生自身の経験や工夫によるもの
私自身も会を発足してからの10年間は、N師父に学んだ太極拳の体系を、ほぼそのままの形で練習してきたし、教えてもきた。
その後、N師父の門派の練習過程を一応修了し、また師のアドバイスもあり、他の拳種を研究する事になる。2007年頃から鄭先生に宋派八卦掌を学び始め、李老師からは馬貴派八卦掌を学び始める。馬貴派は、早くにみんなで練習してよいとの許可を頂いていたので、当会の会員に指導もしてきた。ただ当初は、やはり学んだものをそのまま教えていたし、八卦掌は八卦掌という別の拳法という感じであった。また同じ八卦掌でも宋派は宋派、馬貴派は馬貴派と分けて考えていた。
2012年から鄭先生に古伝太極剣を学ぶ。当会の会員さん達と定期的に剣の復習を行う。太極拳と太極剣の関連性をうっすらと感じつつも、この頃もまだ剣は剣といった感じである。学んだ事を忠実に套路を中心に練習する。
そして2014年、李老師から八卦大刀を学び、鄭先生から太極刀を学び始める。
言葉では表現するのは難しいが、この頃から刀法と徒手術(太極拳や八卦掌)が繋がり始める。一言で言えば、刀法の動きで拳法をやるようになった。つまり太極拳をやっていても、八卦掌をやっていても、剣や他の兵器をやっていても、根本的に同じ身法で行っているのである。
ここに来て、これまで学んできたものが繋がったという感じである。つまり、太極拳も八卦掌も剣や刀法も、それぞれの特徴を残しながらも同じものになってきた。
そして、いま現在、この刀術を基にした練習カリキュラムを再構成している。さすがに一元の功法を省く事はできないが、ある程度身体が纏まってきたら、刀法で体を大きく使い、身体のより深部から力を出すことを学んだほうが、結果的に太極拳や八卦掌を学ぶ上で効率的だと思われる。
今後、当会の練習体系がどのように進化していくか、私自身も楽しみである。会員の皆さんも楽しみにしていて頂きたい。

【陳氏太極単刀】今後、当会では刀術の練習が重要なものになっていくと思われる。
2015年1月5日 記す
Copyright(C)2003-2015 福岡伝統太極拳 湧泉会 All rights reserved.
当会の許可無く転載を禁じます。
中国武術の学び方のトップページへ戻る >>
中国武術の時間のトップページ へ >>
当ブログの記事が参考になった方は、ブログランキングへのご投票をして頂けると感無量です(^人^)



福岡伝統太極拳 湧泉会 公式ホームページ。
中国武術の時間 当会代表の個人ブログ
福岡八卦掌研究会 八卦掌専修教室
福岡伝統中国武術協会 協会の各教室の紹介
twitter@yusenkai 当会の練習記。
湧泉会@facebook 湧泉会公式facebook
2014年度の会の活動に関しては、【2014年を振り返って】で記したので、今回は私個人の昨年の気付きについて記してみようと思う。
不思議と、ここ数年は武器術を学ぶ機会が多く、鄭先生からは、子母鴛鴦鉞や太極剣、太極刀を学ぶ機会があり、李老師からも八卦大刀を学ぶ機会を得た。また現在、陳式太極拳の師父からは梨花槍を学んでいる。
実際に徒手技法だけでなく、武器術を学んできて得た感想としては、武術というものは、体系(全体)を学ばなければ意味が無いという事だ。
その門派の全体の体系を学ぶ事で、基本と套路(技法)の関連性が分かり、武器術を学ぶ事で徒手術(拳法)と武器術の関連も分かってくる。太極拳や八卦掌等の内家拳系の徒手技法のほぼ全ては、剣や刀、槍法などの武器術を発端としている。つまり剣や刀、槍を扱う動作で徒手技法も行っているという事だ。
実際に太極拳や八卦掌を学んでいると、套路上に意味の分からない動作や立ち方があると思う。それらは武器を持った際の動作や技法であることが多い。また対練を学ぶ事で一人稽古の意味も分かり、戦術や戦略は武器術のものが、そのまま徒手術にも活用されている事が理解できてくる。
つまり全体で一つという事だ。体系の一部分だけを知っていても何の役にも立たないし、また単純に他流の部分を寄せ集めても意味はない。
その門派の全体を学ぶ事で、その門派の絶対的な原理や法則を頭と身体、そして感覚で理解することで功夫が高まっていく。それが武術であり、伝統門派だと思う。
言い換えれば、体系を学ぶという事は、その先生が学んできた技術と練習体系を同じ過程を経ながら学んでいく事で、先生の動きを構成している要素を学んでいく事と言えるだろう。
先生が学んできた全ての技術を学ぶ事は難しいかもしれないが、それでも出来るだけ全体の体系(技術)を学ぶ事で少しづつ師の動きの要素は見えてくるだろう。そのためには、まずは先生の動きを真剣に真似る事。そして、その門派に伝わっているものは、選り好みせずにしっかり学んでおく事だ。選り好みをしていては、先生の動きを構成している要素が揃わない訳だから、当然先生の動きに近づく事はできないだろう。

【36式太極刀】武術は体系を学ぶ事が何より重要である。
〈体系は進化する。〉
さてここで問題がある。それは、体系を学んでいく過程で練習メニューが次第に増えていき、段々と膨大な量になっていく事だ。ここで、多くの方は基本や初級で学んだ内容を捨てて、先の内容に進む。それはそれで結構だが、基礎的なものを練習して積み重ねていかなければ功夫は身に付いてくれない。(増えていく練習メニューをどう消化していくかは、練習の秘訣の中級編をご覧頂きたい。)
先生のほうでも、その膨大な量の練習メニューの全てを日常的に練習するのは無理だろう。必然的に、先生のほうでも学んだものを整理して必要なものは残し、内容が重複していたり不必要な部分は省いていく。そして、それがその門派の体系となっていく。つまり体系というものは、普遍的なもの(要素)を残しながら、同時に変化していく。つまり進化していくという事だ。
理由は、先生自体も成長していくからである。先生自体が上達し、理解が深まるにつれて、何をどれ位の頻度で練習していくかの割合が変わっていくし、そこに先生自身の経験や工夫が加わる。
同じ先生に習っていても、習った時代で教えている内容や練習体系が変わってくるのは、そのためである。先生自体の動きや技も変わり、考え方も変わっていくため、体系自体も変わっていくという事だ。
その門派の体系を構成している要素としては、以下の2点が挙げられる。
① その先生が学んだ根幹的な体系
② その先生自身の経験や工夫によるもの
私自身も会を発足してからの10年間は、N師父に学んだ太極拳の体系を、ほぼそのままの形で練習してきたし、教えてもきた。
その後、N師父の門派の練習過程を一応修了し、また師のアドバイスもあり、他の拳種を研究する事になる。2007年頃から鄭先生に宋派八卦掌を学び始め、李老師からは馬貴派八卦掌を学び始める。馬貴派は、早くにみんなで練習してよいとの許可を頂いていたので、当会の会員に指導もしてきた。ただ当初は、やはり学んだものをそのまま教えていたし、八卦掌は八卦掌という別の拳法という感じであった。また同じ八卦掌でも宋派は宋派、馬貴派は馬貴派と分けて考えていた。
2012年から鄭先生に古伝太極剣を学ぶ。当会の会員さん達と定期的に剣の復習を行う。太極拳と太極剣の関連性をうっすらと感じつつも、この頃もまだ剣は剣といった感じである。学んだ事を忠実に套路を中心に練習する。
そして2014年、李老師から八卦大刀を学び、鄭先生から太極刀を学び始める。
言葉では表現するのは難しいが、この頃から刀法と徒手術(太極拳や八卦掌)が繋がり始める。一言で言えば、刀法の動きで拳法をやるようになった。つまり太極拳をやっていても、八卦掌をやっていても、剣や他の兵器をやっていても、根本的に同じ身法で行っているのである。
ここに来て、これまで学んできたものが繋がったという感じである。つまり、太極拳も八卦掌も剣や刀法も、それぞれの特徴を残しながらも同じものになってきた。
そして、いま現在、この刀術を基にした練習カリキュラムを再構成している。さすがに一元の功法を省く事はできないが、ある程度身体が纏まってきたら、刀法で体を大きく使い、身体のより深部から力を出すことを学んだほうが、結果的に太極拳や八卦掌を学ぶ上で効率的だと思われる。
今後、当会の練習体系がどのように進化していくか、私自身も楽しみである。会員の皆さんも楽しみにしていて頂きたい。

【陳氏太極単刀】今後、当会では刀術の練習が重要なものになっていくと思われる。
2015年1月5日 記す
Copyright(C)2003-2015 福岡伝統太極拳 湧泉会 All rights reserved.
当会の許可無く転載を禁じます。
中国武術の学び方のトップページへ戻る >>
中国武術の時間のトップページ へ >>
当ブログの記事が参考になった方は、ブログランキングへのご投票をして頂けると感無量です(^人^)



福岡伝統太極拳 湧泉会 公式ホームページ。
中国武術の時間 当会代表の個人ブログ
福岡八卦掌研究会 八卦掌専修教室
福岡伝統中国武術協会 協会の各教室の紹介
twitter@yusenkai 当会の練習記。
湧泉会@facebook 湧泉会公式facebook
- 関連記事
-
-
中国武術の学び方 トップページ 2015/12/15
-
武器を譲る…。 2015/07/10
-
体系を学ぶ、全体を学ぶ。そして体系は進化する。 2015/01/07
-
冬の防寒対策 2013/11/22
-
学ぶ時期、運、縁、タイミング…。 2013/08/17
-
スポンサーサイト