練功法と練習の違い
- 2012/05/02
- 22:24
練功法と練功の違い
今回の番外編は、練功法と練功の違いについてである。
どちらも一所懸命に練習してくれれば、あえて分ける必要はないかもしれないが、中国武術の練習には所謂、通常の練習以外に練功法といったものがある。
言い方を換えれば、練習と補助運動と言えるかもしれないが、一般的なスポーツとは少しニュアンスが違うので一度説明しておこうと思う。
例えば、ボクシングを習っていたとしよう。
通常ボクシングの練習と言えば、シャドーボクシングやサンドバック、ミット打ちやスパーリングなどを誰もが想像するだろう。
しかし当然それだけでなく、体力や筋力を付けるために腕立て伏せや懸垂、腹筋、背筋もするし、またバランス感覚やリズム感を身に付けるために縄跳びをしたり、スタミナを付けるためにランニングをしたりもするだろう。こういった練習はボクシングそのものの練習というよりは、ボクシングを行なうための体作りの練習(補助運動)と言えると思う。
補助運動だけを行なったからといってボクシングが上手くなるわけではなく、あくまで主体はボクシングの練習であるが、そのボクシングの練習を行なうためには、これらの補助運動が必要になると言うことである。
では中国武術(特に内家拳)の場合はどうであろうか。
中国武術の場合も、一人練習として各技法の単式練習や套路練習、対人練習として推手や各種の対打があり、馬歩や歩法をはじめとした様々な補助運動がある。
そして、練習と補助練習以外にも練功法といったものがある。
練功法にもまず内功と外功があり、その他様々な練功法があるが、ここでは、当門で行なう最も初期段階の練功法についての紹介したい。
中国武術の練功法というのは、一般的な運動の補助練習(筋力トレーニングなど)ではなく(もちろん筋力アップを目的としたものもあるが)、その門派独特の動作を行なえるようにするために、身体(体形・体格・体質)そのものを変革していくものがまず挙げられると思う。
つまり、ソフトではなくハードそのものを変革していくわけである。
当門ではまずその門派独特の姿勢を身につけるものが主として行なわれる。
例えば、沈肩墜肘という要訣がある。
直訳すれば、肩を沈め、肘を墜すとなる。しかし一般の姿勢のままでは、どんなに肩を沈めて肘を落としても、大して沈まないし落ちないだろう。
実は私も太極拳を始めた頃、その教室の先生が毎回「肩を落として、肘を落として」と言っていたが、いくら落とそうと思っても大して沈まないし落ちようもなかった。
理由は簡単である。その先生が練功法を知らなかったわけである。
沈肩墜肘を正しく行なうには、沈肩墜肘を行なうための練功法があるわけである。
その練功法を知らないと、なかなか功は進まないし、本人だけの努力では効果も薄い。
私は、この当門独特の姿勢を身につけるための練功法をN師父に教わった。
また、姿勢を身につけるための練功順序といったものもある。
例えば含胸抜背といった姿勢上の要訣もある。
初心者に含胸を行なわせると、大抵は猫背になるようだ。
実は含胸を正しく行なうためには、まず胸を柔らかくするための練功があり、その上で肩甲骨や肩鎖関節を柔軟にする必要もある。しかし一般的な体操では、肩甲骨や肩鎖関節を柔軟にする方法はそれほど伝わっていないようだ。特に肩鎖関節と言っても、一般の方にはなじみもないだろう。
また、含胸を行なうにあたり、虚領頂勁や立身中正といった要訣をクリアしている必要もある。
そして、虚領頂勁や立身中正を正しく行なうための練功法や要訣も存在する。
全く良くできたものである。
最近、私がつくづく思うのは、伝統への感謝である。
とてもこれだけのものを一代では考え付かないと思う。
一人の天才が現れ、その人が次の代にその要訣や練功法を伝え、またその次の代の人達がそれをより発展させ、それを何代も繰り返しながら、我々の代にそれを残してくれた。
感謝以外の気持ちが浮かばない。
私の代でそれを発展させることは難しいかもしれないが、せめて次の代へは正しく残したいと思う。
今年入会された方も時期をみて、基礎練功法を指導するの期待していただきたい。
2012-05-02 記
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今回の番外編は、練功法と練功の違いについてである。
どちらも一所懸命に練習してくれれば、あえて分ける必要はないかもしれないが、中国武術の練習には所謂、通常の練習以外に練功法といったものがある。
言い方を換えれば、練習と補助運動と言えるかもしれないが、一般的なスポーツとは少しニュアンスが違うので一度説明しておこうと思う。
例えば、ボクシングを習っていたとしよう。
通常ボクシングの練習と言えば、シャドーボクシングやサンドバック、ミット打ちやスパーリングなどを誰もが想像するだろう。
しかし当然それだけでなく、体力や筋力を付けるために腕立て伏せや懸垂、腹筋、背筋もするし、またバランス感覚やリズム感を身に付けるために縄跳びをしたり、スタミナを付けるためにランニングをしたりもするだろう。こういった練習はボクシングそのものの練習というよりは、ボクシングを行なうための体作りの練習(補助運動)と言えると思う。
補助運動だけを行なったからといってボクシングが上手くなるわけではなく、あくまで主体はボクシングの練習であるが、そのボクシングの練習を行なうためには、これらの補助運動が必要になると言うことである。
では中国武術(特に内家拳)の場合はどうであろうか。
中国武術の場合も、一人練習として各技法の単式練習や套路練習、対人練習として推手や各種の対打があり、馬歩や歩法をはじめとした様々な補助運動がある。
そして、練習と補助練習以外にも練功法といったものがある。
練功法にもまず内功と外功があり、その他様々な練功法があるが、ここでは、当門で行なう最も初期段階の練功法についての紹介したい。
中国武術の練功法というのは、一般的な運動の補助練習(筋力トレーニングなど)ではなく(もちろん筋力アップを目的としたものもあるが)、その門派独特の動作を行なえるようにするために、身体(体形・体格・体質)そのものを変革していくものがまず挙げられると思う。
つまり、ソフトではなくハードそのものを変革していくわけである。
当門ではまずその門派独特の姿勢を身につけるものが主として行なわれる。
例えば、沈肩墜肘という要訣がある。
直訳すれば、肩を沈め、肘を墜すとなる。しかし一般の姿勢のままでは、どんなに肩を沈めて肘を落としても、大して沈まないし落ちないだろう。
実は私も太極拳を始めた頃、その教室の先生が毎回「肩を落として、肘を落として」と言っていたが、いくら落とそうと思っても大して沈まないし落ちようもなかった。
理由は簡単である。その先生が練功法を知らなかったわけである。
沈肩墜肘を正しく行なうには、沈肩墜肘を行なうための練功法があるわけである。
その練功法を知らないと、なかなか功は進まないし、本人だけの努力では効果も薄い。
私は、この当門独特の姿勢を身につけるための練功法をN師父に教わった。
また、姿勢を身につけるための練功順序といったものもある。
例えば含胸抜背といった姿勢上の要訣もある。
初心者に含胸を行なわせると、大抵は猫背になるようだ。
実は含胸を正しく行なうためには、まず胸を柔らかくするための練功があり、その上で肩甲骨や肩鎖関節を柔軟にする必要もある。しかし一般的な体操では、肩甲骨や肩鎖関節を柔軟にする方法はそれほど伝わっていないようだ。特に肩鎖関節と言っても、一般の方にはなじみもないだろう。
また、含胸を行なうにあたり、虚領頂勁や立身中正といった要訣をクリアしている必要もある。
そして、虚領頂勁や立身中正を正しく行なうための練功法や要訣も存在する。
全く良くできたものである。
最近、私がつくづく思うのは、伝統への感謝である。
とてもこれだけのものを一代では考え付かないと思う。
一人の天才が現れ、その人が次の代にその要訣や練功法を伝え、またその次の代の人達がそれをより発展させ、それを何代も繰り返しながら、我々の代にそれを残してくれた。
感謝以外の気持ちが浮かばない。
私の代でそれを発展させることは難しいかもしれないが、せめて次の代へは正しく残したいと思う。
今年入会された方も時期をみて、基礎練功法を指導するの期待していただきたい。
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