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練習の秘訣 初級編2 【口訣、要訣】


さて初級編の第2回である。前回の第1回では、とにかく、まずは「先生の動きをよく観(見)ましょう。」という話をした。では次に来るのは何であろうか?

当たり前だが、「先生の話をよく聞きましょう!」という事である。

別に太極拳や中国武術に限った話しではないが、何をするにも物事にはコツというものがある。そのコツは聞いてすぐに理解できるものもあれば、長い年月をかけながら養っていくものもある。

それを言葉で伝えるのが、中国武術風に言えば、口訣であり要訣であると言える。

その口訣や要訣も大別すれば二つ挙げられる。

一つは、具体的な身体への要求。もう一つは抽象的な意念を用いたものである。

順に説明しよう。

【身体への要求】とは、文字通り身体に対する要求の事であり、具体的に言えば、「身体をまっすぐに」とか「肩を落として」とか「腰は椅子に腰掛けるように」とか「大地を掴むように」といったものである。またより具体的に「○○の部分を強く意識して」といったものもある。

【抽象的な意念】とは、主にイメージを用い身体内の感覚を養っていく方法である。当門の場合であれば、「地中からエネルギーを吸い上げるように」とか「重い岩を引き寄せるように」とか「細い針穴に身体を通すように」など、意念を用いた口訣は数多くある。

どちらの要訣にしても、一番重要な事は、思い続ける事、意識し続ける事で、最終的には具体的な感覚として、それらの感覚を無意識的に身体に植え付けてしまう事である。

こうして言葉にすると簡単なように思えるが、私自身の経験からしても口訣や要訣を本当に身に付けるには、日々試行錯誤しながら、身体の感覚を探る必要があり、やはり一朝一夕で完成するものではない。

例えば、「抓地」という要訣がある。一言で言えば、大地を掴むという意味である。

しかし実際に大地を掴んでみても「抓地」にはならず、練功の結果として、大地を掴んでいる状態になり、その状態の事を「抓地」と言う。

何だか禅問答のようだが、その状態を感覚として掴んで、初めて要訣を理解したという事になる。

ちなみに私が抓地を感覚として掴んだのは八卦掌を学んで5年ほど経った頃である。そして、その感覚を得た事で、まず立ち方(姿勢)が変わり、立ち方が変わる事で、全体の動きが変わり出した。また力の発生源についても意識をし始めた。このように太極拳や八卦掌というものは、その要訣を具現化した時に明確に上達していくものだと思う。

同じく太極拳の要訣に「含胸」というものがある。「胸を含んで」とは、太極拳の指導者がよく使う言葉である。

しかし「含胸」を本当に理解している指導者が果たして、(私自身も含めて)どれ位いるのだろうかと思う。

なぜなら、含胸には少なくとも(私が理解している範囲で)二つの意味があり、恥ずかしながら、私自身も理解する事ができたのは、つい最近の事だからだ。

一つ目は、身体への具体的な要求で、意や気を下に沈めるために行う。馬貴派八卦掌の熊形走圏の姿勢などは、その典型だろう。この場合は胸を落とすと表現したほうが良いのかもしれない。

二つ目は、前方へ力を出すための要求になるが、この場合は単純に胸を含んでも(胸を落としても)、何の用も成さず、逆に弊害となる場合もある。

この場合の含胸を理解するには、抜背を理解しなければならない。

抜背については、ここでは詳しく説明はしないが、抜背とはある意味、含胸とは正反対のものである。

その抜背をなぜ必要とするのかが分かり、その上で「含胸抜背」と、なぜ含胸と抜背がワンセットになっているのかに気付かなければ、含胸の本来の意味は、分からないように思う。

しかも一つ目の含胸と二つ目の含胸は全く別のものと理解されながら、実際には一致しているのだから、余計に理解がしにくく困ったものだ。

このように師から与えられた口訣や要訣も、本当の意味で理解できるのは、自己の研鑽を積んだ後、数年経ってからという事が多い。

そのためにも、本当に身に付けたいと思っている方は、初心の頃から、練習日誌やメモを取る事をお勧めする。

というのも、先生自体も日々試行錯誤して成長されているわけだから、同じ意味でも一年二年と月日が経てば、説明の仕方も変わるし、一見すると全く正反対の説明をされている事もあるからだ。

練習日誌を読み返すと、「あぁ、あの頃はこういう説明をされていたんだな」とか「これとこれは同じ意味の説明をしていたんだな」と気付くこともあるだろう。

口訣や要訣の意味も自分自身と共に成長していくものである。

2015,5,29 記

龍形


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