最大の難関② 環境の変化①
- 2010/12/10
- 20:43
最大の難関② 環境の変化①
前回は練習の段階における難関を説明したが、今回は環境における最大の難関を説明しよう。
あなたは、今自分が学びたい拳種を自分自身が選んだ先生の下で学んでいるとしよう。修行もだいぶ進み先生の信頼も得てきた。できればこの先生の下でこの道場でずっと学び続けたいと思っているとしよう。
しかし、人生とは分からないもので、ある日突然に環境の変化というものが訪れる。
そういった際に諦めて辞めてしまえば、今までの修行の成果は一切が無駄になる。この連載の第一回で紹介したように武術の世界を去っていった兄弟弟子や生徒達も多く見てきた。たまに彼らの近況を聞くこともあるが、やはり彼らの多くは道場に戻りたくても戻れずに後悔をしているようだ。今回はそういった環境の変化に対応しながら、いかに修行を続けていくのかを年代順にアドバイスしたいと思う。答えはここに置いておくので皆さんが必要になった時に見てもらいたい。
①就職
中国武術を学び始める最初の段階としては、10代から20代前半の学生時代ということになるであろうか。この時期は社会人と比べれば、時間の融通も利くし、若くて元気だし、とにかく一番練習できる年代だろう。この期間はとにかく精一杯練習して学べるものはどんどん吸収していってもらいたい。可能ならば、一門のルートを通じて中国や台湾など本場の中国武術にも積極的に触れてみるのも良いだろう。就職して社会人になってからは、とてもではないがそんな時間は取れないだろうから、この期間に出来る限りの体験をしておくことだ。
しかし、その楽しい学生時代は、あっという間に通り過ぎ、いざ就職してみるとあなたの環境は一変していることだろう。仕事は覚えなければいけないし、帰宅時間が遅くなることもしばしばあるだろう。正直、武術の練習どころではないのかもしれない。実際、就職と共に武術の世界を去っていく者も多い。しかし、この時期を乗り越えなければ、とてもではないが、「中国武術家」というものにはなれないだろう。昔学生時代にやっていたというのは、生涯武道であるこの世界では通用しない。
では、皆さんの先輩達はどうやってこの時期を乗り越えてきたのだろうか。
具体的に言えば、就職という環境の変化に慣れないうちは無理をする必要はないと思う。先生にちゃんとした理由を述べて休会させてもらうなり、一時的に道場を離れるのも仕方ないだろう。ただし重要な事は、そこで先生にきちんとした理由を説明しておくということである。言い換えれば、こうした言い辛いことをしっかりと説明できることが社会人としての第一歩となる。きちんと説明をしておけば、再開したい時に道場に顔を出し辛くなる事もないだろう。そして再び、続ける環境が出来そうであれば、躊躇せずに早めに道場に戻った方がよいだろう。時期を逃すと戻り辛くなる。
道場に戻れば、社会経験豊富な先輩達がいくらでもいるだろう。社会に躓いた時は、先輩達にアドバイスをもらえば良い。一門の人間は家族であり兄弟である。
また仕事を続けていく上で一時的に大きなプロジェクトなどに加わり、多忙を極める時期などもあるだろう。そういった場合などもこの項を参考にしてもらいたい。
ただし、環境が変化しようが、仕事が多忙であろうが、そんな事は全く関係なく道場に通い続ける人もいる。最終的には、自分の気持ち次第である。私などは、多少体調が悪かろうが、多忙でどうしようもない状況だろうが、練習に飛び込んでさえしまえば、家で疲れを癒すよりも、よっぽどすっきりしてストレスも解消されると思うが、皆さんはいかがなものだろうか。
②結婚・出産・子育て
結婚というのも実際に環境が大きく変わる一つだと思う。特に女性の場合は、妊娠や子育てというのは、人生の中でもっとも重大な出来事だろう。もちろん妊娠中は本格的な稽古はできないだろうから、そのことに集中してほしい。
出産後も子育てをしながら道場に通うのは、旦那さんの協力が不可欠だろう。少しづつ状況をみながら、道場に戻るのならば頑張ってほしいと思う。理想を言えば、女性の場合は、結婚や出産までにある程度の段階まで学んでおけば、子育てをしながら自分で練習が出来るだろう。後は子育てが一段落してから、本格的にまた始めれば良いと思う。
男性の場合も子育て中は、家庭を出来るだけ大事にしながら稽古に励んで頂きたい。
③ケガや病気
武術として学ぶ場合であれば、時にはケガをすることもあるだろう。また健康目的の方なども転倒して腰を打ったり手首を骨折してしまう事があるかもしれない。
骨折や捻挫など程度にもよるだろうが、基本的には完治するまで外的な稽古は一切行なわず治療に専念してもらいたいと思う。治療中に下手な稽古をすると、ケガをした部分をかばってしまい、変な癖が身に付いてしまったり、姿勢のバランスが崩れてしまう事が多い。この期間は色々と武術のことを考えてみると良いだろう。自分は何のために学んでいるのか、これから先どうなって行きたいのかなど、いま一度自分自身を見つめてみる事も必要である。
どうしても行いたければ、中国武術の学び方 番外編④ で紹介したようにイメージや意を用いたトレーニングなどを行ってみると良いだろう。もちろん見学は大歓迎である。この機会に先生や先輩、また後輩の動きを徹底的に見てみると良い。必ず様々な気付きがあると思う。
また自分ではなく家族が病気やケガをすることもあるだろう。その場合は、自分が看病や介護をしなければならない立場になる。なぜ自分がと思うこともあるだろうが、そういった予期せぬ事が起こるのが人生である。自分がケガをしたり病気になった場合は、家族があなたの看病や介護を行なうわけだから、これも修行だと思ってしっかり看病なり介護を行なってもらいたいと思う。
自分の稽古に関しては、道場に通えなくなる時期もあるだろう。しかし、どんなに看病や介護が忙しくとも、多少は自分の時間がある筈だ。この期間は自主稽古の期間だと思って、自分自身で色々と考え、工夫して稽古を行なってもらいたい。私自身の経験を言えば、私も家族の介護中に道場の設立を決めた。こういった経験や時期というものも武術を続けていく上で必要なものだと思う。
環境の変化は、他にもいくつかあるので、次回に継続して紹介したい。
2010-12-20 記
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前回は練習の段階における難関を説明したが、今回は環境における最大の難関を説明しよう。
あなたは、今自分が学びたい拳種を自分自身が選んだ先生の下で学んでいるとしよう。修行もだいぶ進み先生の信頼も得てきた。できればこの先生の下でこの道場でずっと学び続けたいと思っているとしよう。
しかし、人生とは分からないもので、ある日突然に環境の変化というものが訪れる。
そういった際に諦めて辞めてしまえば、今までの修行の成果は一切が無駄になる。この連載の第一回で紹介したように武術の世界を去っていった兄弟弟子や生徒達も多く見てきた。たまに彼らの近況を聞くこともあるが、やはり彼らの多くは道場に戻りたくても戻れずに後悔をしているようだ。今回はそういった環境の変化に対応しながら、いかに修行を続けていくのかを年代順にアドバイスしたいと思う。答えはここに置いておくので皆さんが必要になった時に見てもらいたい。
①就職
中国武術を学び始める最初の段階としては、10代から20代前半の学生時代ということになるであろうか。この時期は社会人と比べれば、時間の融通も利くし、若くて元気だし、とにかく一番練習できる年代だろう。この期間はとにかく精一杯練習して学べるものはどんどん吸収していってもらいたい。可能ならば、一門のルートを通じて中国や台湾など本場の中国武術にも積極的に触れてみるのも良いだろう。就職して社会人になってからは、とてもではないがそんな時間は取れないだろうから、この期間に出来る限りの体験をしておくことだ。
しかし、その楽しい学生時代は、あっという間に通り過ぎ、いざ就職してみるとあなたの環境は一変していることだろう。仕事は覚えなければいけないし、帰宅時間が遅くなることもしばしばあるだろう。正直、武術の練習どころではないのかもしれない。実際、就職と共に武術の世界を去っていく者も多い。しかし、この時期を乗り越えなければ、とてもではないが、「中国武術家」というものにはなれないだろう。昔学生時代にやっていたというのは、生涯武道であるこの世界では通用しない。
では、皆さんの先輩達はどうやってこの時期を乗り越えてきたのだろうか。
具体的に言えば、就職という環境の変化に慣れないうちは無理をする必要はないと思う。先生にちゃんとした理由を述べて休会させてもらうなり、一時的に道場を離れるのも仕方ないだろう。ただし重要な事は、そこで先生にきちんとした理由を説明しておくということである。言い換えれば、こうした言い辛いことをしっかりと説明できることが社会人としての第一歩となる。きちんと説明をしておけば、再開したい時に道場に顔を出し辛くなる事もないだろう。そして再び、続ける環境が出来そうであれば、躊躇せずに早めに道場に戻った方がよいだろう。時期を逃すと戻り辛くなる。
道場に戻れば、社会経験豊富な先輩達がいくらでもいるだろう。社会に躓いた時は、先輩達にアドバイスをもらえば良い。一門の人間は家族であり兄弟である。
また仕事を続けていく上で一時的に大きなプロジェクトなどに加わり、多忙を極める時期などもあるだろう。そういった場合などもこの項を参考にしてもらいたい。
ただし、環境が変化しようが、仕事が多忙であろうが、そんな事は全く関係なく道場に通い続ける人もいる。最終的には、自分の気持ち次第である。私などは、多少体調が悪かろうが、多忙でどうしようもない状況だろうが、練習に飛び込んでさえしまえば、家で疲れを癒すよりも、よっぽどすっきりしてストレスも解消されると思うが、皆さんはいかがなものだろうか。
②結婚・出産・子育て
結婚というのも実際に環境が大きく変わる一つだと思う。特に女性の場合は、妊娠や子育てというのは、人生の中でもっとも重大な出来事だろう。もちろん妊娠中は本格的な稽古はできないだろうから、そのことに集中してほしい。
出産後も子育てをしながら道場に通うのは、旦那さんの協力が不可欠だろう。少しづつ状況をみながら、道場に戻るのならば頑張ってほしいと思う。理想を言えば、女性の場合は、結婚や出産までにある程度の段階まで学んでおけば、子育てをしながら自分で練習が出来るだろう。後は子育てが一段落してから、本格的にまた始めれば良いと思う。
男性の場合も子育て中は、家庭を出来るだけ大事にしながら稽古に励んで頂きたい。
③ケガや病気
武術として学ぶ場合であれば、時にはケガをすることもあるだろう。また健康目的の方なども転倒して腰を打ったり手首を骨折してしまう事があるかもしれない。
骨折や捻挫など程度にもよるだろうが、基本的には完治するまで外的な稽古は一切行なわず治療に専念してもらいたいと思う。治療中に下手な稽古をすると、ケガをした部分をかばってしまい、変な癖が身に付いてしまったり、姿勢のバランスが崩れてしまう事が多い。この期間は色々と武術のことを考えてみると良いだろう。自分は何のために学んでいるのか、これから先どうなって行きたいのかなど、いま一度自分自身を見つめてみる事も必要である。
どうしても行いたければ、中国武術の学び方 番外編④ で紹介したようにイメージや意を用いたトレーニングなどを行ってみると良いだろう。もちろん見学は大歓迎である。この機会に先生や先輩、また後輩の動きを徹底的に見てみると良い。必ず様々な気付きがあると思う。
また自分ではなく家族が病気やケガをすることもあるだろう。その場合は、自分が看病や介護をしなければならない立場になる。なぜ自分がと思うこともあるだろうが、そういった予期せぬ事が起こるのが人生である。自分がケガをしたり病気になった場合は、家族があなたの看病や介護を行なうわけだから、これも修行だと思ってしっかり看病なり介護を行なってもらいたいと思う。
自分の稽古に関しては、道場に通えなくなる時期もあるだろう。しかし、どんなに看病や介護が忙しくとも、多少は自分の時間がある筈だ。この期間は自主稽古の期間だと思って、自分自身で色々と考え、工夫して稽古を行なってもらいたい。私自身の経験を言えば、私も家族の介護中に道場の設立を決めた。こういった経験や時期というものも武術を続けていく上で必要なものだと思う。
環境の変化は、他にもいくつかあるので、次回に継続して紹介したい。
2010-12-20 記
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