福岡伝統太極拳 湧泉会 ブログ 〔中国武術の時間〕

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拝師という制度

拝師という制度

拝師とは、その門派の正式な門人になり、自分が学んでいる先生の正式な弟子になる事をいう。また正式な弟子になることにより、その門派の技術を正式に学ぶ許可を得たということになる。

具体的に言えば、その門派の開祖から先達達、自分の先生、先生の兄弟弟子達に一門の人間になることを宣言し、自分の先生との一生の師弟の関係を結ぶ儀式である。

文革前の中国では、武術にしろ医術にしろ宗教にしろ、正式に学生から門人になる場合は、避けるわけにいかない儀式であり習慣であった。

ところが文革中から文革後の中国では、古き悪しき習慣として次第に行なわれなくなっていったようだ。何しろ資本主義的なものや封建的(伝統的)なものは、何かと理由をつけては迫害され、武術をやっていただけでも捕まっていた時代である。自然と執り行われなくなっていったようだ。

実際、中国武術の世界でも文革の影響は大きく、この時代の武術家は弟子を取らなくなり、武術を練るのを止めてしまった人も多い。系譜の中でもこの時代の人たちはすっぽり抜けていることが多々あるようだ。失伝してしまった門派も多いかもしれない。練習もできず弟子を取ることも許されなければ必然的にそうなっていくだろう。

文革後も10年間くらいは、実力のある武術家ほど表には出なかった。

なぜなら時代がいつ逆戻りするか分からないからである。考えてみてほしい。武術を練習していたことや弟子を取って指導していたことが原因で、囚役されたり迫害を受けていたとしたら、皆さんは改めて自分が武術をやっていると名乗り出るだろうか。名乗り出る人などいないだろう。

この文革中は、海外に亡命した武術家も多かったようだ。とにかく中国武術の世界も多大なダメージを受けたといって良いと思う。文革前の中国武術と文革後の中国武術は全く別物と言っても良いかもしれない。

実際に文革前に武術を学んでいた人たちから見たら、今の中国武術家がどんなに自分達は武術としてやっていると言っても、やはり踊りにしか見えないだろう。やはり時代が違うのである。

現在ではこの拝師という制度の扱われ方も門派によって様々なようだ。古式のやり方そのままに行なう門派もあるし、中には結婚披露宴さながらに豪勢にやる門派もある。また先生によっては100人も200人も拝師弟子を抱えている方もいる。(どうやって100人も200人も教えるのか分からないが)日本国内では、簡素化もしくは省略化されて行なわれる場合が多いようだ。やはり儀式に必要な一切を日本で揃えるのは大変だろうし、師兄弟を呼び寄せるのも大変だからだろう。

しかし、儀式は簡素化もしくは省略化されたとしても、門弟と学生を分ける習慣は依然として続いているようである。

というよりも、やはり必然的に分けざるを得ないというのが現実だろうか。理由は前回の中国武術の学び方⑦を読んで頂ければ分かると思う。誰でも彼でも教えるべきではない理由がそこに存在するからだろう。

また拝師したからといって、それで修行が終わる訳ではなく、むしろようやくスタート地点に立てたと言ったほうが正解である。はっきり言って拝師後の修行の方がはるかに基準は厳しくなる。また一生の師弟の契りというのは、言ってみれば親子と同じ意味であり、もし師が年老いて生活に困窮した場合は、師の老後の面倒を見る義務もあるということだ。

そう考えると日本国内で本当の意味で拝師している人はかなり少ないと思う。

日本国内での実際

さきほど拝師の儀式自体は、日本国内では簡素化もしくは省略化される事が多いようだと書いたが、実際にはどのように行われているのだろうか。

表面上は、弟子と学生を分けている事を秘密にしている門派も多いと思うので、書くと困る方もいるとは思うが、困らない程度に少し例を挙げて見よう。

一つに例としては、やはり一般の練習時間の後であるとか、もしくはその生徒を個人的に指導している時間帯に他の生徒には教えない内容を指導しているようである。それは練功法であったり、型の別法であったり、技の使用法であったりするわけだが、その都度「今見せた練習法は他の生徒の前では行わない事。」とか「今話した内容は○○さんとは、話しても良いが、他の人には話さないように。」といった言葉が添えられる。

最初は誰でも不思議に思うだろう。しかし、よくよく見ると全員に同じ指導をしているように見えても、何かが違う事に気付くと思う。またその門派の歴史や歴代の拳士達の逸話などを個人的に聞かせてくれる機会もあるだろう。

そのうちにそういった特別な弟子達だけの練習会に参加が許されたり、先生の師兄弟を紹介されたりもする。(実はこういった時は、他の門弟や師兄弟に、この人物を弟子にしようと思っていることを伝え、見定めてもらっている場合が多い)

そして、一門の技術を正式に学ぶべき人物と技術的にも人格的にも認められれば、やはり本気で学ぶ意志があるかどうかを問われる日が来るだろう。

ただし、その場ですぐに「はい!」と答えられる人は稀だと思う。やはり一門の技術を正当に伝承するというのは、非常に重い責任を背負うことになる。先生の方も即答は求めないだろう。数日、自分なりにしっかり考えて答えれば良いと思う。

拝師の儀式自体は、上記したように門派によって様々だろう。しかし儀式は省略されることになっても、師と一門の先達達に対し生涯修行を続けることの誓いを立てる必要はあるだろう。

おおよそ、その際は以下のような事を誓約させられる。

●不必要に人前で拳を見せることはしない。
●武術を学んでいることを、他人に自慢したり口外しない。
●不要な技比べや試合をしない。
●護身以外の目的で武術を使用しない。
●拳を売り物や見せ物にしない。
●一門の人間は家族と捉え協力する。
●生涯、拳の修行を続ける。
●伝えるべき人間を慎重に選んで伝える。

また以下のようにその門派独特のものもある。例えば、

・○○拳を学んでいた人間には伝えない。

これは、過去にその門派と○○拳の間で何らかの抗争があった場合などだろう。

・○○省の出身者には教えてはならない。

これは、過去の内戦の際に○○省の人間にひどい仕打ちを受けたとか、何らかの因縁に由来される。日本で言えば幕末に幕府側についた会津潘の人間が長州藩や薩摩潘に良い感情を持っていないのと同じ理由だろう。

ちなみに日本国内で道場を開いている門派であれば、ほとんど無いと思うが、やはり日本人には絶対に伝えてはならないという誓約のある門派もある。理由は当然だが、過去の日清・日中戦争に原因がある。

その他にも門派独特の誓約はあるだろう。しかし一番重要な事は、やはり先生の弟子となり息子となる覚悟があるかどうかだろう。自分が選んだ先生に自分自身も選ばれたということである。自分にその覚悟があり、納得したならば、その道を進めば良いと思う。

2010-11-10 記

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[ 2010/11/10 14:14 ] 中国武術の学び方 | TB(-) | CM(-)

中国武術界特有の習慣

前回、中国武術の世界では、古くから門弟(一門の弟子)と学生(一般の生徒)を分ける習慣があり、門弟になれなければ、実伝や真伝といった本質的な部分の指導は、生涯受けることができないと書いた。

ショックを受けられた方もいるだろうし、ある意味ひどい話しだなと思った方もいるかもしれない。

確かに同じように月謝を払って稽古に通っているのにひどい話しだなと私も思う。しかし、そういった習慣や伝統があるなら従わなくては仕方ないだろう。要は自分自身が門弟に選ばれるよう努力すればよいことだ。

ちなみに独特の習慣と書いたが、よくよく考えれば、他の武道にしろ格闘技にしろスポーツにしろ、結局は同じではないかとも思う。どの業界でも素質がありやる気のある生徒は優遇されるだろうし、また学ぶ目的によっても区別はあるだろう。例えばボクシングを習うにしても、ダイエットや健康維持で通う人と最初からプロを目指す人とでは、明らかに教え方は変わってくる。

ただ中国武術の場合は、やはり教えてもらわなければ一生気付かないで終わってしまう内容やある段階まで練功が進まなければ、仮に教えてもらっても何の理解もできない内容を有していることは確かだろうと思う。

門弟(弟子)になるために。

とはいえ自分自身が門弟になりたくても、そう簡単には門弟にはなれないのが中国武術の世界である。

まず前提として、他の同期生と比べて技術的にずば抜けている部分というのは当然必要だろう。その上で、人柄が良く後輩の面倒見が良いとか、あるいは決して素質は無いけれどもひたむきに努力して頑張っているとか、何かしら他の人物と比べて秀でている部分というものが必要になってくる。要はその門派にとって必要な人間であるか、先生にとってこの人に真剣に伝えたいと思わせる何かをその人が持っているかどうかだろう。

言い換えれば、人並みの努力しかできない人やいても何の役にも立たない人であれば、残念ながら門弟になるのは難しいと思う。

そのためには、やはり技術的にも人間的にも自分自身をどれだけ客観的に見れるかどうかが重要になってくる。

技術的な面での欠点は、先生が日々の稽古で注意してくれていると思う。それを客観的に捉え、どれだけ自分自身で改善していけるか。どんなに一所懸命に練習していても、内家拳はこの欠点を自分自身で改善できる人間でなければ習得は難しい。

人間的な欠点は、前回説明した入門後の心得六箇条を参考にしてもらいたい。こちらは本人が自分自身で改善する意志があればどうとでもなるだろう。

後は、ひたすらにやる気を見せ続け、努力を続けるしかないだろう。その時期は3年後に来るかもしれないし、5年後、10年後かもしれない。とにかく自分は一生をかけて武術をやっていきます。という気持ちが先生に伝わるかどうかだと思う。

最終的に門弟になれるかどうかは、皆さんが習っている先生方が決めることなので、この項では、中国武術界特有の習慣を紹介して、そのヒントとしてもらいたい。

中国武術界特有の習慣

まず、なぜ門弟と学生を分けるのか、その理由から話を進めていこう。

以前、当会の会員向けに配布した「太極拳・内家拳の歴史」という拙文と重複するが、現在では老人向けの健康法としてのイメージが強い太極拳も本来は陳家溝という村を守るための護身術であった。

中国という広大な国土は、絶えず異民族間で侵略・征服を繰り返してきた歴史がある。近代でいえば、映画化された「ラストエンペラー」の時代は、満州族の支配によるものだったし、チンギス・ハーンや孫のフビライが築いた歴史上の最大国家「元」はモンゴル族によるものだった。

そうした異民族による侵略や内戦が繰り返される度に、一番被害を受けるのは戦地の住民である。戦争中の略奪行為や暴力行為は、今の我々には想像できない壮絶さだろう。その恨みは50年後100年後も忘れられる事はない。そして我々日本人も中国を荒らしまわった張本人である。先日の尖閣諸島の問題にしても中国側の反応を見れば、彼らの根底にいかに根深く反日感情があるかが分かるだろう。また地方では戦争以外にも馬賊や盗賊の襲来というものも当然あっただろう。

そういった略奪や暴力に対抗するために、村人達は武器を持ち自衛する必要があった。

当初は原始的で幼稚な技術だったかもしれない。しかしスポーツのように負けて次があるわけではない。自分の身は自分で守らなければならない。守れなければ殺されるだけである。当然、研究せざるをえなかっただろうし、なかには才能に優れた者もいただろう。そうした試行錯誤の結果、生まれたのが中国の伝統武術だと思う。

当然自分達の身を守るためのものだから、家族や一族の者にしか教えない。簡単に教えてしまっては、自衛のための技術を盗まれ、返し技を研究されてしまう。自分達以上の武術を発生させてしまうとことになる。だから、一族以外には余程の信頼関係がなければ教えないし見せもしない。見せるわけにいかないのだ。

実際に太極拳の用法なども学んでみると、あまりにもえげつないものが多く、表面上のイメージは壊れてしまう。

そういった習慣が、昔ほどではないが現在も残っており、絶対的に信用のおける門弟とそうではない学生とにわける必然性があり、実伝や秘伝の類は、門弟以外に見せられないというわけである。

ちなみに総合格闘技が一般に広まりだした頃、ブラジルのグレイシー柔術というのが断トツの強さを誇っていた。彼らの技術の中には、同じように一族関係にのみ伝える技術が多くあったという。しかし試合に出てその技術を公開していくうちに、次第に研究され勝てなくなっていった。現在では、グレイシー柔術の技術を基盤にそれ以上の総合格闘技の技術体系が構築されつつあるようだ。やはり見せてしまえば、それ以上の技術が発生してしまうということだ。

少し話が脱線してしまったが、こういった弟子と学生を分ける習慣をひとつの形式・儀式としたものが、いわゆる
拝師制度ということになる。

次回は、この拝師という制度について紹介してみよう。

2010-11-01 記

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